日本企業が海外展開を迫られるなか、海外で事業立ち上げなどを任される日本人は今後もますます増えるのだろうと思います。
が、肩肘をはって、俺は海外でもやれるはずだ、その土地に骨を埋める覚悟で、とか、グローバルビジネスマンになるんだ、とか、そんなことは思わなくていいと思っています。
知らない土地に行くのに、そんな覚悟を決めるのは非現実的です。
大体、そんな覚悟を決めなければいけないような人はあまり海外に向いていないです。その人がやれることは、たいがい、現地の人にしっかりした給与と目標と権限をあたえてやってもらえば、その人よりもずっと上手にやるはずです。
あまりに仕事仕事と考えている生真面目な人ほど、プレッシャーと義務感、故郷に錦を飾るんだ、という感覚が強すぎて、気がつけば事務所とアパートの往復しかしていない日々を過ごし、本社の日本人との関係だけを頼りに何ヶ月も孤独に過ごすことになります。 肩肘をはらず、余暇をみつけてはいろんな地方を巡り、現地の人たちと友達になり、そういうスタンスを大事にしておかなければ、現地マーケットを知る人間になる、という、会社にとっても自分個人のキャリアにとっても一番大事なミッションを実現できないのは自明のことです。
それよりも、自分がさっさと日本に帰ってこれるように、信頼に足る優秀な人を採用するための権限規定と給与モデル、そしてどういう付加価値をそのマーケットで出していきたいのかという、事業ビジョンを明確にすることに全力を注ぐべきです。それが日本から出ていく海外進出隊長の、最大の役割です。
日本に進出してくる外資の社長が、日本人をさしおいて日本語も分からないのにガンガン営業に出ていって、自分の思い込みで捉えた市場環境を本社に報告していたらどう思うか?という問題です。余程優秀な外国人でもない限り、きっと、その外国人社長はとんちんかんなことばっかりやっているに違いないし、日本人スタッフはやることもないから辞めるでしょう。
日本企業の多くがこれをなかなかできないでいるのは、海外進出にあたっての明確な目標やビジョンを後回しにしており、そのために現地採用スタッフの達成すべき目標と成果報酬を決め、それを達成するための必要な予算と権限を与える、ということを実行するのが非常に困難だからです。
ですが、この壁を超えてグローバル標準でやるか、徹底的に日本型でやるのか、それをまず経営意思としてはっきりさせ、従業員にも理解させるのはとても重要なことです。
このようなことも、まだ海外に実際に行ってないこれからの人にはなかなか意味が理解できないと思いますが、少し頭の片隅に置いておいてもらうと、現地での仕事で行き詰まったときにも、明確なゴールが見えてきて楽になるときがくるのではと思います。