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地域活動をする理由

「お金にもならない地域活動の、何が楽しいんですか?」

ここのところ短い間に、どういうわけか何度か同じ質問を投げられています。

旅行をしたり出張したりして他の土地にいくと、その土地に対する印象というものは面白いほどに先入観や、最初に出会った人の印象によって左右されることに気づきます。

「あぁ楽しそうだな」「何が待っているだろう」なんて思いながら行けば、どんな土地や景色の中からも、良い部分や新しい価値観、親切で優しい人たちを探しだしてきてはそれを楽しんでそこに同化していこうとする自分がいるし、「あぁあそこ行きたくないな」「何もなさそうな町だな」と思えば、何を見ても新鮮に見えないし、住んでいる人も無機質な他人としか捉えず、土地の慣習だってくだらない因習としか捉えられず、そこに流れる空気から遮断された自分がいるものです。

自分の親もそうでした。関西出身の親は東京に住みたいと思っていたのに、実際に転勤で東京に来たときに住んだのは浦安でした。そうなると、浦安の良いところを楽しもうという姿勢にはならず、「なぜ千葉県なんかに住まないといけないのか。早く都内に引っ越したいものだ」という思いをつねに胸にかかえながら日々の生活を送ることになり、どうしたっていいことにはなりません。

自分は今は荒川区に住んでいるけど、ここも同じ。「荒川区みたいな柄の悪い下町に住んでいるけど、できれば台東区や文京区に引っ越したい」。そう思いながら心の中で「仮住まい」を続けている人の話しはよく聞きました。だいたい、もともとこの土地に住んでいる人がそもそもそうだったりします。文京区あたりに引っ越すようなことになれば、「凄いねぇ、出世したねぇ」なんていう羨望の眼差しで捉えがちです。

まったく、土地にはなんの罪もないのに可哀想な話しです。こうやって、足元にころがっている良い部分や、古い伝統、景観が、肝心のそこに住む人たちの無関心のために壊れていくのです。たくさんの人がふと気づいたころには、人の温もりも感じられない、すっかり変わってしまった無計画な町の残滓だけが残っていることになりかねません。私の実家がある神戸市ポートアイランドがそうなので、これは事実です。

もちろん、住んでみた結果、どうしてもその土地に合わないという人もいますしそれは否定しないですが、最初から「いつか離れたい場所」と思う人ばかりが住んでいるような土地では、10年20年たったころには間違いなく荒廃します。

別に子どものためにやっているわけでもないけれど、自分たちの子どもが大人になったときに、育ってきた土地が、ずっと住んでいたいなぁと思えるような、活気ある、楽しい良い町になっているほうがいいですよね。

だから、自分が情報発信という地域活動をはじめた理由は簡単なのです。

「自分が住んでいる町を、できるだけたくさんの他の人にも好きな町になってもらいたいから」

やり方はいろいろあると思いますが、根本的にそういうことなのです。その中で出来ることをやっているということであって、だからまあ自分や家族のためということです。

まぁ、活動をしてみると、地元というだけで仕事では会えないような人たちとのつながりが生まれて、活動を通じた知りあいのお店も増えて、町なかでばったり会っては「こんにちは!」なんて挨拶できるご近所さんができたりして、実際はそういうことが楽しかったりするんですが。別にそういうことっていうのは、わざわざ他の土地に探しにいく必要は無いわけです。