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ワークアンドライフバランスよりワークプロダクティブリィ

photo by a200/a77Wells

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海外の人と話していて、日本人は本当によく働くね、と言われた。

よくあることだが、実際には、その裏には「そんなに遅くまで何をしてるのか分からない」というニュアンスが含まれていた。つまり大したアウトプットが出て来ないのになんだかよく働いている、という感じ。

彼が続けて、日本人は私生活のことをどう思ってるんだ、仕事の後に飲みに行く回数もやたらと多いし、と言うので、「日本人は仕事が充実しないと私生活も充実できないことを知ってるんだよ」とちょっと日本人のことを美化して返しておいた。その捉え方はあながち間違っていないとも思うが、実際、日本人がオフィスにいたり会社の人と一緒にいる時間はかなり長いのは事実だと思う。散々残業したあげくに更に飲みに行こうとするのは日本人ぐらいだろう。仕事と私生活の分離も何も、もはやオフィス生活が私生活そのものであり、会社員としての自分が自分の全てに近いのが多くの人にとっての実態ではないかと思う。

自分は、「ハードワーク」は嫌いじゃないし、寧ろ、ハードワークからしか得られないものがあると思っている口なので、近頃の「ワークアンドライフバランス」のような、ワークとライフは別物で天秤にかけられるような錯覚を与える言い方が嫌いだったりするのですが、それでも日本人の仕事の仕方に対して海外の複数の人が疑問を持っているのは事実なので、何がおかしいのかと考えてみると、日本人はWork hardをWork productivelyに置き換えることが必要ではないかと思い当たった。

Productiveに働くには意味のある明確な目的と、それに沿った目標が必要で、それを合い言葉にすると仕事が目的と目標から逆算で設定できるので無駄な仕事が減らしやすい。ProductiveではないのにHardに働こうとすると実際にはそれは出口のない仕事になっているので、みな憂鬱になり、ワークアンドライフなんとかという話しになる。Productiveというのは気持ちの話しではなく、具体的で意味のあるProduct=アウトプットの生産効率のことであり、当然評価にも直結するのでProductiveであれば生活も快適になる。

更に、個々の社員がProductiveに働ける環境にしようとすると、自ずと、事業自体が顧客や社会に対してどういうアウトプットを出したいのかという意思とそのための最低限の戦略、目標設定がなければいけないので、Productiveかどうかを共通の合い言葉にすることは、事業体自体の存在意義とProductivityを見直すことにもつながる。マネジメントにとって、事業自体の存在意義を考え、1人1人がProductiveに働けるように環境を整えることは大変高度で難しい仕事だが、それを放棄していてはマネジメントとして失格なのでそれこそハードに考えぬいて設定しなければならない。

ここまで書いてみて、1つ思い出したことがある。それはある日本の伝統工芸の職人にインタビューをしたときのことだが、その職人は「繊細な細かいところに徹底的にこだわって技を磨くのが職人でしょうか」と聞かれて、「職人ていうのは機械では出来ないレベルの製品を均一な精度でどれだけ沢山量産できるかどうかがが職人の技なんだよ」と回答していた。それは思いもかけない視点だったが、結局高品質の製品を作ることが目的ではなく、より多くの人に高品質な製品を使ってもらうことで多くの人に良さを知ってもらい、それで自分たちも稼ぐことが目的なのであって、ただ単に技を追究したいというナイーブな話しではないということだった。その話しは、正に、Productiveかどうか、という話しに直結するように感じる。高度なProductivityの中に本当の技があるというのは、日本にも元々ある考え方なのかもしれない。よくよく考えて見ると、英語の「Work」は、ただ働くことではなくて、出来上がった作品のことも指すことに思い当たりました。日本人のイメージする「ワーク」と、英語ネイティブの人の「Work」はそもそもニュアンスが異なる可能性が高いですね。

ということで、You work very hard!と自分や他人を褒めるのではなく、You are so productive!と褒める思考を、個人的にもマネジメントとしても、より強く意識していこうと思います。