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Googleはなぜキングなのか。

最近、GoogleのLarry Pageのインタビューを読む機会があり、見事にブレないなと思わされたところ。

そして、今日もそう思わせる記事がリリースされていた。(写真をクリック)

Google to Tackle Mobile’s Fat Finger Proglem

Googleが、モバイル端末上でユーザが間違って広告を押してしまうことにより、意図せず広告サイトに遷移してしまう問題を解決するため、AdMobに新しいテクノロジーを導入し、広告に触れたときに本当にそれが意図的なものなのかどうかを確認するステップを入れられるようにした、というリリース。

Googleが、単に検索エンジンの王者なのではなく、なぜネット広告業界のキングであり続けるのか。

ネット広告ビジネスが次から次へと生まれるのに、結局のところ、Google一社でいいんではないの?と思わせる要因はどこにあるのか。

その答えの1つがここにあると思う。

つまり、普通のネット広告事業会社は、「いかにクリックさせるか」という視点でプロダクトを開発するのに対して、Googleは、「いかに”無駄な”クリックをさせないか」という視点でその広告商品を開発している(ように思える)。

このGoogleのアプローチと、同じアプローチを根本思想にもって広告商品を開発している会社は他にあまり無いのでは?と思う。

これからモバイル広告が増々収益の柱と化していくであろうこの時期に、今回のリリースのような手を打ってくるところが、やっぱりいいPhilosophyを持った会社だ。結局こういうところにその事業そのものが持つエンゲージメント力が内在されるのは疑い無い。

信道の精神で、見習いたいと思います。

われわれが開発しているものは何なのか?

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「今後の施策をみなで考えよう」

こういってプロジェクトメンバーで一緒に集まり、みなで考える。

みなでウンウン唸って考える。考える。

何も出てこない。

5時間たち、やっぱりまだ何も出てこない。

出てきたものはありきたりでいまいちみな自分自身納得しきれていない。

まあでもとりあえずこれで進もう。きっとこれが一番のはずだ。よし。取り敢えず走ろう。

 

センセーショナルなデビューを飾ったとしても、それを継続できるチームは少ししかいない。一方、地味にずっと業界をリードし続けている企業や事業は知らないだけで沢山ある。

レディーガガはあっという間に世界の音楽シーンのトップに立った。しかしそれを続けることのほうが大変だ。それを過酷な競争環境の中で何年も続けているのだからレディーガガ・チームはスーパーチームに違いない。

 

おそらくWebサービスに限った話しではないが、プロダクト開発をしはじめると、想定していた利用者の反応と実際が違っていたり、思ったように利用者が集まらなかったり、どこかで一度暗礁に乗り上げるときがある。

一度盛り上がったサービスも、ユーザが飽きてきて、新しい何かを提供しなければいけないのに、みんなで考えてもナイスなアイデアが浮かばない。

そうこうしているうちに事業モーメンタムが縮小していく。売上も下がる。諦めの気分が広がる。短期的な施策を実施し、短期的な結果で終わる。自転車操業のようにまた短期的な施策を考えて実施する。

「もう結構頑張ったし、コンセプトを変えてまた新しいことやろうか」

よく起きることだと思う。

なぜこんなにアイデアに枯渇するのか。前進感なく流されるようにチームは自転車操業を続けるのか。

 

一方で、まるで毎月のように着々と新しい改善を加え、驚くような施策をうってくるサービスもある。アイデアに枯渇している事業は、残念ながらいつまで経っても万年フォロワーである。そんな考えがあったのか!とその成功モデルを取り入れることに一生懸命になる。

なぜリーダーになれる事業とフォロワーになる事業は固定化されるのか。

 

 

ウェブサービスに限らないと思うが、プロダクト開発をしばらく続けていると、開発しているのは機能ではないということに気付かされる。

開発しているのはそれを使う側の人の豊かになる気持ちだったり、そこにアプローチしてくる人のマインドだったり、新しい学びだったり、そういう派生していく内側のものをサービスを通じて開発している。

ここに気付いているチーム、何を開発しているのかをビジョンとして描いているチームは、機能の次元のアイデアに枯渇することは無い。寧ろ、実現できていない施策の山に常に埋もれている。

人の内側にしっかりと刻まれる記憶を開発する。それがまるで一つの生き物のように定期的にシグナルを発する記憶を刻む。

それが究極のビジネスモデル。

ウェブサービスは特に、五感で感じることが難しく、機能開発も簡単に出来てしまう。そのため、「マッシュアップ」したりちょっと手を加えることで開発だと捉えてしまいがちな部分があるように思う。

しかしそれは開発しているのではなく、綺麗に整頓しているだけだ。

 

ウェブ業界に入って8年ほどになるが、サービスにしろ広告商品にしろ、組織体制にしろ、あらゆるものがマッシュアップされ、それを開発だ、企画だ、と言うことが多い。

 

先日プロダクトデザインの現場に入っていったデザイナーの方と話しをする機会があった。

プロダクトデザインはウェブデザインと異なり、まずそもそも三次元になる。

三次元になるとどういうことが起きるかというと、手でさわったり、口で触れたり、体ごとそこに乗っかったり、そういうことが出来るようになる。つまりプロダクトを全身で体感することになる。

同じ用に形を作っても、素材の耐久性や柔軟性、感触など、いろいろな要素があり、それらを学んだ上で適切な選択をしなければならない。そこから既にデザインが始まっている。

それらを全て含んだ上での利用者体験を開発していることになる。

マッシュアップ、しただけでも製品は作れるだろうけど、すぐにそれは在庫の山となって破綻する。ウェブサービスの場合は積み上がる在庫という恐怖が無いので、簡単に隠れ在庫を作ってしまえる。

 

面白いだけでも、便利なだけでも不足している。

人が自然と温かく、心地良くなれるような、気持ちそのものに焦点を当てて、そのための手段としてサービスを作る。

そういうプロダクトは自然とリーダーになる。仮に他に競合がいても、市場を引っ張る双璧、と言われてお互いに切磋琢磨するだけのこと。施策に困ったり、競合に追われたり、市場環境の変化についていけずに自転車操業になることもない。施策は溢れ出る。悩むのはそれをどう実行するか、の部分。

これがビジネスのコアモデルであり、Engagement開発のベースモデルではないだろうか。

開発しているのは機能ではなく、人の内側にあるポジティブな記憶だと思うと、なぜあのサービスは常に先を走り、あのサービスは停滞しているのか、それが分かるように思う。

マッシュアップをしているうちは何も進化していない。そこでのスピード感は、根本的に何も前進していないのだからスピードではない。

人の気持ちのひだに跡をつけるスピードがどうなのかを、意識したい。

ユーザーエンゲージメントとは?

最近、「顧客作りと情報発信」をテーマとしていろいろな会社や団体を回ったり、話しを聞く機会があるのですが、それを繰り返していると、顧客作りにたいする潜在的な欲求がいくつか見えてきました。

 

その中の1つに、「出来るだけ楽に顧客を作りたい」という欲求があります。

顧客作りを担当している担当者はみな非常に忙しいので、出来るだけ楽に顧客作りをしたいと思うのは当たり前のことだと思います。

また、「ソーシャルが出来たので顧客作りが簡単になる」という期待感も多いようです。

取り敢えずやってるというところは多いですが、方針決定をする人達が現場で苦労する人達のことをあまり理解できないまま、ソーシャルやれば何とかなると思ってしまっている例も多そうです。

 

本当にソーシャルは顧客作りを楽にしてくれるのか?

この辺りの、ソーシャルを通じた顧客形成のキーワードとして、最近海外から「ユーザーエンゲージメント」という考え方が入ってきていると思うのですが、少し分かりにくい英語で、少なくとも自分は最初聞いたときは???でした。

試しにエンゲージメントという言葉を検索してみたら、facenaviさんから、Facebookエンゲージメント調査結果、というものが発表されていました。これによれば、エンゲージメントとは、実際にアクションが取られたかどうかの指標だ、ということです。

これについてはマーケターとしては何か分かりやすい数値的指標が必要ということだと思いますが、前提となるエンゲージメントの概念についてはこれから仕事において追究していくテーマにも含まれるものなので、自分なりの解釈を書いておこうと思います。

 

現在、エンゲージメントという言葉が日本でどれくらい市民権を得ているかまだ分かりかねていますが、僕がこの言葉に始めて出会ったのは2010年でした。

そのとき担当していたリサーチ事業において、ボストンで行われた業界カンファレンスに出席したのですが、今後のマーケティングにおいてはBrand engagement, customer engagementが極めて重要であり、リサーチ事業においても、このengagementを生み出す人の気持ちの源泉を探るようなリサーチをしなければいけない、これからはそういうものが顧客に求められるという話しが強調されていたのです。既にそのテーマだけで1つのセッションコースが出来ているほどでした。

自分はそのとき、engagementという英語の言葉の意味がいまいち掴みきれなかったのですが、実は、その時は会場にいた米国の業界の人達も、その意味をはっきりと分かっている人は多くはなかったようです。

有名リサーチャーの講演会場は満席で、会場からも盛んに質問が飛び出していましたが、英語の世界でもこのengagementという言葉を明快に解説する説明は出てこず、伝えたいことや、何となくみなが共通に感じる課題意識はあるのですが誰もうまく説明できない状態でした。まだまだ言葉先行という雰囲気が濃厚に漂っていたのです。

 

なぜ、2010年のリサーチ業界でcustomer engagementという言葉が大きなテーマになっていたのか?

それはfacebookの社会インフラ化が、人々の情報消費行動を大きく変えるとともに、元々存在していたengagementという概念を具体的に実行できてしまう環境を整えつつある、という認識があったことに大きく関連していました。リサーチ業界が上客とする消費材メーカーを中心に、商品展開をする上で商品開発そのものよりもその後のブランドコミュニケーションが重要であると考えはじめていたこと、ブランドコミュニケーションの根本をマスマーケティングではなく個人毎の嗜好に心地良く響くパーソナルマーケティングに置く必要があると考え、自ら実行する事例が多く出始めていたのです。

そこで鍵となったのは、単に「顧客の嗜好に合わせる」ということに加え、「顧客が進んで選択してくれる」ための日々の顧客の生活の中に入り込んだ接点の構築であり、琴線に触れる開発ストーリー作りであり、それを「すぐ隣にいる信頼できる普通の人」が媒介してくれることでした。そして、これら一連のものを全て含む概念としてcustomer engagement、brand engagementという言葉が使われていたのだと、今振返ってみると思います。 単に「顧客嗜好を知る」ということではなく、「顧客自身も嗜好を知らない」「現状にそれほど大きな不満は無い」「嗜好に合わせた商品を提示されるだけでは実は退屈していて、行動には移らない」といった状況に対して、更に一歩踏み込んだマーケティングが必要になっているという時代背景があるように思います。

リサーチ業界において、MROC(Marketing Research Online Community)と呼ばれる調査手法が盛んに研究されるようになったのは、まさにこの一連の流れが出来る過程を経過観察する中から必要なdeep insight(心理洞察)を抽出することが必要だという認識があったからです。リサーチが、決められたテーマに沿ってリサーチするだけで終了するのではなく、その後の企業のマーケティング活動全体と直接連動することを意識した提案が出来るリサーチに変わっていくし、そうなっていかなければ業界価値そのものが失われる可能性がある、リサーチ自体も、エンドの消費者と直接コミュニケーションをしていく中でブランドと消費者の間にengagementが生まれる過程の琴線に触れるスキルを持った専門家集団になっていかなければならない、そういう危機感が満載だったのです。

気がついたらかなりリサーチの話しに寄ってしまいましたが、engagementという言葉が従来のブランドマーケティングに新しく加えた要素は何か。それはつまり「時間」なんだと解釈しています。

わかりやすい例で言えば、婚約をすると、engage ringを交換しますが、engagementというのはつまりそういうことです。長期的に相手に対してコミットするということです。

 

facebook勃興以前から盛んに言われていたバズマーケティング、と呼ばれるものと、customer engagementが生まれる過程やそのためのマーケティングが違うのはつまりそういった部分にあります。バズマーケティングというものが一過性の口コミの拡散であり、衝動的な欲求を生むことを目的にしているという意味ではテレビコマーシャルと大した変わりが無いのに対して、customer engagementという概念に基づくマーケティングでは、長くじっくりと関係を作っていき、信頼を生んでいくことを重視します。それは、もともと大事なことでブランド構築担当者であれば誰でも意識していることだと思いますが、facebookが、その関係値をより日常的で、直接的な距離感のものにしてしまいました。

 

なので、冒頭の期待感に戻ると、確かに、facebookなどは顧客にアクセスする確率を上げました。そういう意味では、楽になっています。また、一旦顧客を囲い込むと、殆どお金を使わずにコミュニケーションが可能になります。そういう意味では、金銭的にはとても楽です。特に中小企業にとってのメリットは膨大です。

しかしここで注意しなければいけないのは、顧客にアクセスできるということと、顧客との距離を縮めるというのはまるで別のことだということ。

そこでは長期的なcustomer engagementが必要で、これは多大な労力が必要です。

但し、大企業も中小企業も、ここのテーマにおいてはみな同じスタートラインに立っているどころか、中小企業のほうが社員からトップに至るまで個人個人の顔が見えやすいので、寧ろ有利に立っている部分もあります。あとは如何にその機会を活用できるか、ということになります。

 

平凡な結論ですが、結局、ソーシャルが可視化したcustomer engagementの世界には、機会の平等はあっても結果の平等はもちろん無いし、新しくやっていかなければいけないことは、お金で解決できるものではない分、却って面倒なものになっているとも言えると思います。後はそれをやりきるだけの覚悟と、本当に自社のサービスを広めたいという夢の本物ぶりが試されることになると思います。長期的に信頼を構築していくことが簡単に出来るわけがないということですね。

 

ところでこの中で具体的なツールとしてfacebookについては上げたのですが、twitterは取り上げませんでした。これが何故かについてはまたどこかでまとめてみようかなと思います。