「今後の施策をみなで考えよう」
こういってプロジェクトメンバーで一緒に集まり、みなで考える。
みなでウンウン唸って考える。考える。
何も出てこない。
5時間たち、やっぱりまだ何も出てこない。
出てきたものはありきたりでいまいちみな自分自身納得しきれていない。
まあでもとりあえずこれで進もう。きっとこれが一番のはずだ。よし。取り敢えず走ろう。
センセーショナルなデビューを飾ったとしても、それを継続できるチームは少ししかいない。一方、地味にずっと業界をリードし続けている企業や事業は知らないだけで沢山ある。
レディーガガはあっという間に世界の音楽シーンのトップに立った。しかしそれを続けることのほうが大変だ。それを過酷な競争環境の中で何年も続けているのだからレディーガガ・チームはスーパーチームに違いない。
おそらくWebサービスに限った話しではないが、プロダクト開発をしはじめると、想定していた利用者の反応と実際が違っていたり、思ったように利用者が集まらなかったり、どこかで一度暗礁に乗り上げるときがある。
一度盛り上がったサービスも、ユーザが飽きてきて、新しい何かを提供しなければいけないのに、みんなで考えてもナイスなアイデアが浮かばない。
そうこうしているうちに事業モーメンタムが縮小していく。売上も下がる。諦めの気分が広がる。短期的な施策を実施し、短期的な結果で終わる。自転車操業のようにまた短期的な施策を考えて実施する。
「もう結構頑張ったし、コンセプトを変えてまた新しいことやろうか」
よく起きることだと思う。
なぜこんなにアイデアに枯渇するのか。前進感なく流されるようにチームは自転車操業を続けるのか。
一方で、まるで毎月のように着々と新しい改善を加え、驚くような施策をうってくるサービスもある。アイデアに枯渇している事業は、残念ながらいつまで経っても万年フォロワーである。そんな考えがあったのか!とその成功モデルを取り入れることに一生懸命になる。
なぜリーダーになれる事業とフォロワーになる事業は固定化されるのか。
ウェブサービスに限らないと思うが、プロダクト開発をしばらく続けていると、開発しているのは機能ではないということに気付かされる。
開発しているのはそれを使う側の人の豊かになる気持ちだったり、そこにアプローチしてくる人のマインドだったり、新しい学びだったり、そういう派生していく内側のものをサービスを通じて開発している。
ここに気付いているチーム、何を開発しているのかをビジョンとして描いているチームは、機能の次元のアイデアに枯渇することは無い。寧ろ、実現できていない施策の山に常に埋もれている。
人の内側にしっかりと刻まれる記憶を開発する。それがまるで一つの生き物のように定期的にシグナルを発する記憶を刻む。
それが究極のビジネスモデル。
ウェブサービスは特に、五感で感じることが難しく、機能開発も簡単に出来てしまう。そのため、「マッシュアップ」したりちょっと手を加えることで開発だと捉えてしまいがちな部分があるように思う。
しかしそれは開発しているのではなく、綺麗に整頓しているだけだ。
ウェブ業界に入って8年ほどになるが、サービスにしろ広告商品にしろ、組織体制にしろ、あらゆるものがマッシュアップされ、それを開発だ、企画だ、と言うことが多い。
先日プロダクトデザインの現場に入っていったデザイナーの方と話しをする機会があった。
プロダクトデザインはウェブデザインと異なり、まずそもそも三次元になる。
三次元になるとどういうことが起きるかというと、手でさわったり、口で触れたり、体ごとそこに乗っかったり、そういうことが出来るようになる。つまりプロダクトを全身で体感することになる。
同じ用に形を作っても、素材の耐久性や柔軟性、感触など、いろいろな要素があり、それらを学んだ上で適切な選択をしなければならない。そこから既にデザインが始まっている。
それらを全て含んだ上での利用者体験を開発していることになる。
マッシュアップ、しただけでも製品は作れるだろうけど、すぐにそれは在庫の山となって破綻する。ウェブサービスの場合は積み上がる在庫という恐怖が無いので、簡単に隠れ在庫を作ってしまえる。
面白いだけでも、便利なだけでも不足している。
人が自然と温かく、心地良くなれるような、気持ちそのものに焦点を当てて、そのための手段としてサービスを作る。
そういうプロダクトは自然とリーダーになる。仮に他に競合がいても、市場を引っ張る双璧、と言われてお互いに切磋琢磨するだけのこと。施策に困ったり、競合に追われたり、市場環境の変化についていけずに自転車操業になることもない。施策は溢れ出る。悩むのはそれをどう実行するか、の部分。
これがビジネスのコアモデルであり、Engagement開発のベースモデルではないだろうか。
開発しているのは機能ではなく、人の内側にあるポジティブな記憶だと思うと、なぜあのサービスは常に先を走り、あのサービスは停滞しているのか、それが分かるように思う。
マッシュアップをしているうちは何も進化していない。そこでのスピード感は、根本的に何も前進していないのだからスピードではない。
人の気持ちのひだに跡をつけるスピードがどうなのかを、意識したい。